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松江地方裁判所 昭和44年(む)65号 決定 1969年6月18日

被疑者 水田恵

決  定

(被疑者氏名略)

右の者に対する傷害被疑事件について、昭和四四年六月一八日松江地方検察庁検察官検事大迫勇壮がなした接見等に関する指定に対し、弁護人野島幹郎から右指定の取消しを求める旨の準抗告の申立てがあつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

松江地方検察庁検察官検事大迫勇壮が昭和四四年六月一八日付でなした別紙記載の接見等に関する指定は、これを取り消す。

理由

一  本件準抗告の申立ての趣旨および理由は、弁護人野島幹郎提出の準抗告の申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

二  当裁判所の事実調の結果によると、被疑者は傷害被疑事件について、昭和四四年六月一五日逮捕され、同月一八日松江警察署留置場(代用監獄)に勾留され、かつ、同日刑事訴訟法第八一条による接見等の禁止の決定がなされたところ、同日松江地方検察庁検察官検事大迫勇壮が別紙記載の接見等に関する指定(以下これを本件指定という。)をしたこと、弁護人野島幹郎は同日午後四時四五分頃被疑者の在監する松江警察署を訪れ、被疑者との接見を申し出たところ、捜査上の支障のある事由を告げられることなく、検察官の発する具体的指定書を持参して来ないと接見させられないといわれて、その接見ができなかつたことが認められる。

そこで考えるに、本件指定は、いわゆる一般的指定といわれるものであり、これがなされると、後に検察官が接見等を許す日時、場所および時間を具体的に指定しないかぎり、被疑者と弁護人との接見等は拒否されることになるものであるから、刑事訴訟法第三九条第三項による指定として、同法第四三〇条第一項による準抗告の対象となると解するのが相当である。

ところで、刑事訴訟法第三九条第三項は、検察官等の捜査官は捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、被疑者と弁護人等との接見等につき、日時、場所および時間を指定できる旨規定しているが、右規定は同条第一項に規定された被疑者と弁護人等との接見等の自由の原則に対し例外的に制限を加えることができることを認めたにすぎないものであり、本来自由であるべき被疑者と弁護人との接見等を原則的に禁止することとなり、後に発する具体的指定によらなければ接見等ができないこととなるいわゆる一般的指定を許すものでない。

したがつて、本件指定は刑事訴訟法第三九条第三項に違反する処分であつて、違法であるといわざるを得ない。

よつて、本件準抗告の申立ては理由があるから刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項により主文のとおり決定する。

(別紙略)

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